水処理における活性炭の効果と可能性・活用法を解説

活性炭は、天然由来の素材を高温処理して作られる多孔質な吸着材で、幅広い分野で活躍しています。
水道水の浄水処理をはじめ、工業用水処理、排水処理など、幅広い分野で活用されています。特に有機物の除去や重金属の吸着に優れており、安全でクリーンな水を提供するための重要な技術となっています。
今回は、活性炭の基本的な仕組みや種類、水処理における役割など活性炭の基本について解説します。
活性炭の基礎知識
活性炭とは何か、その種類などについて説明します。
活性炭とは何か?その特徴
活性炭とは、炭素を主成分とする微細な孔を多く持つ多孔質の物質であり、その最大の特徴は、高い吸着能力を有している点です。この細孔が、活性炭に非常に大きな表面積をもたらし、様々な物質を吸着します。
【主な特徴】
1.多孔質構造:活性炭の内部には、「ミクロ孔」「メソ孔」「マクロ孔」と呼ばれる3種類の異なるサイズの孔がある
2.高い吸着能力: 分子レベルの小さな物質から大きな分子まで、幅広い物質を吸着する
3.再生可能:一定の条件下で加熱することで、吸着した物質を脱着し再生できる
4.用途の幅広さ:水処理や空気清浄、医療分野、食品産業など、幅広い分野で利用されている
活性炭は、物質を物理吸着(分子間力)と化学吸着(化学反応)によって取り込みます。特に、油分、有機物、塩素、臭気物質などを効率的に除去する能力が高いです。
水処理では、家庭用浄水器から工業用水処理施設まで、さまざまな場面で活用されています。
原料の違いによる分類(木炭、ヤシ殻、石炭など)
活性炭は、その原料の違いによって特性や用途が異なります。主に以下の3つの原料が利用され、それぞれ独自の特徴を持っています。
1. 木炭由来の活性炭
木材を炭化し、さらに活性化処理を行って作られた活性炭です。孔径が比較的大きく、マクロ孔やメソ孔が多いのが特徴です。比較的大きな分子の吸着に適しており、水処理では濁りや臭気の除去、空気清浄などに使用されます。食品産業での脱色用途にも用いられることがあります。
2. ヤシ殻由来の活性炭
ヤシの実の殻(ココナッツシェル)を原料とし、非常に硬い構造を持つため耐久性が高いです。ミクロ孔が多く、有機溶媒やガス状物質などの小さい物質の吸着に優れています。
3. 石炭由来の活性炭
石炭(無煙炭や亜瀝青炭)を炭化して活性化処理したものです。ミクロ孔とメソ孔のバランスが取れており、幅広い分子サイズの吸着に対応できます。
工業用の大規模水処理、下水処理、排ガス処理など、幅広い分野で使用されています。比較的安価で、コストパフォーマンスが高い点が特徴です。
活性炭を用いた水処理の仕組み
活性炭の表面には、無数の微細な孔(細孔)が形成されており、この細孔がスポンジのように水中の様々な物質を吸着します。
吸着作用のメカニズム
活性炭の表面には、無数の微細な孔(細孔)が形成されており、この細孔がスポンジのように水中の様々な物質を吸着します。このメカニズムには2つのの要素が関与しています。
【物理吸着】
分子間力(ファンデルワールス力)によって、活性炭の表面や細孔内に水中の分子が引き寄せられます。活性炭の多孔質構造により、表面積が非常に広く、多くの物質を捕捉できます。主に水中の有機化合物や臭気物質、小さな分子を効率よく吸着します。
【化学吸着】
水中の特定の物質と活性炭の表面との間で化学反応が起き、分子が結合することで吸着されます。例として、塩素や一部の重金属は化学的に活性炭表面と結びつきやすい性質を持っています。
細孔の大きさは、吸着される物質の分子サイズと対応しており、適切なサイズの細孔を持つ活性炭を選ぶことが重要です。細孔の数が多ければ多いほど、表面積が大きくなり、多くの物質を吸着することができます。
活性炭が除去できる物質の種類
活性炭は、多種多様な物質を吸着する能力を持っていますが、その効果は物質の性質や活性炭の種類によって異なります。
有機化合物:農薬、染料、界面活性剤、トリハロメタンなど、様々な有機化合物を効果的に除去する
・塩素:水道水に含まれる残留塩素を吸着し、味や臭いを改善する
・臭気成分:水中の異臭の原因となる硫化水素、メルカプタンなどの臭気成分を吸着除去する
・色素:水中の着色物質を吸着し、水を透明にする
・重金属:水銀、鉛、カドミウムなどの重金属イオンを吸着することができる。(ただし、全ての重金属を完全に除去できるわけではない)
・油分や脂肪酸:工業排水や食品加工廃水に含まれる油脂分や脂肪酸を吸着する
なお、活性炭は、ウイルスや細菌を物理的に捕捉することはできますが、完全に不活性化することはできません。
水処理における活性炭の役割
活性炭は、その高い吸着力を活かして、水処理のさまざまな場面で活躍しています。
上水道における浄水処理
上水道での浄水処理では、活性炭は水質の改善と安全性の向上を目的に使用されます。特に、消毒工程で生じる有害な副生成物や臭気物質、有機化合物の除去に効果的です。
具体的な役割としては、
・有機物の除去
・臭気と味の改善
・色度の低減
・消毒副生成物(トリハロメタンなど)の低減
などがあります。
水源に含まれる農薬や除草剤、工業排水由来の揮発性有機化合物(VOC)だけでなく、地下水や河川水に含まれる臭気成分、そして塩素消毒の過程で生成されるトリハロメタン(THM)などの有害物質を吸着して除去します。
工業用水処理
工場や発電所などで使用する工業用水の品質管理において、活性炭は重要な役割を果たします。特に、工業用水では、製品の品質を維持するために、水中の不純物を厳しく管理する必要があります。
・有機化合物の除去
・金属イオンの除去
・ろ材としての利用
・脱色
・水の再利用促進
などで利用されています。
工業用水中の油分、溶剤、染料などの有機物を吸着し、水質を安定化させ、半導体産業や製薬業界など、高い純度の水が必要とされる分野で活性炭が使用されています。
排水処理
工場や下水処理場などで発生する排水中の有害物質を除去するために、活性炭が利用されます。特に、有機物や臭気物質、油分の除去に優れています。
・BOD・CODの低減
・難分解性物質の吸着
・色素の除去
・臭気成分の除去
などに利用されています。



活性炭を用いるメリット
活性炭を使うメリットは、安全性とコストにあります。
安全性
活性炭は木炭、ヤシ殻、石炭などの天然原料から作られており、化学的な毒性を持たないため、安全性が非常に高いです。活性炭の製造過程や使用後の処理においても、環境への負荷が比較的低い物質です。
効果
有機化合物、塩素、臭気成分、色素など、様々な物質を吸着除去することができます。工業排水や生活排水のBOD、COD削減にも貢献し、環境基準を満たす排水処理を可能にします。
活性炭の種類や細孔の大きさによって、吸着する物質を選択的にコントロールすることができるのも大きなメリットです。
低コスト
活性炭は再生可能であるため、廃棄物の削減につながり、環境にやさしい素材といえます。
スイレイでは主にめっき、表面処理の排水を得意としておりますが、CODやBOD等の処理も必要となってきました。そこで、凝集沈殿処理法に組み込みやすいのが活性炭による吸着処理です。
粉末活性炭を添加し吸着処理後、活性炭ともども凝集沈殿処理を行うことや、砂ろ過後に活性炭塔に通水することでCODやBODをある程度までは処理が可能です。出来なければ、重金属を取り除いた後に生物処理を行う必要がありますが、活性炭を活用することで大幅にコストを削減できます。
活性炭、スイカーボンについて
水処理ジャーナルを運営する株式会社スイレイは、創業以来50年以上にわたり、あらゆる工場排水の水処理システムを設計・施工・管理する専門企業です。お客様のご要望に応じて、完全オーダーメイドの水処理設備を提供し、設備保全や環境保全に取り組んでいます。また、独自に開発した薬剤を提供しており、機器との親和性を高め、トラブルを回避し、長期的なコスト削減に寄与しています。
そんな株式会社スイレイの、独自の研究所であるSUIREI Laboを有する活性炭、スイカーボンについて紹介します。


スイカーボン A5(粉末炭) 10kg
詳しくはスイレイオフィシャルサイトの活性炭のページをご覧ください。
https://www.suirei.co.jp/chemical/carbon.php
また、最適な製品の選定や適切な量については、以下からお気軽のご相談ください。
フォームからのお問い合わせはこちらから
https://www.suirei.co.jp/contact/
お電話でのお問い合わせは、052-383-8585、
まとめ
活性炭は、天然由来の素材を高温処理して作られる多孔質な吸着材で、水処理をはじめ幅広い分野で活躍しています。その特徴は、微細な孔構造による優れた吸着能力で、有機物や臭気成分、重金属など多様な物質を効率的に除去できる点にあります。
活性炭は原料によって用途が異なり、飲料水の浄化、工業排水の処理、食品・医療分野などで利用されています。適切な種類を選び、定期的なメンテナンスを行うことで、活性炭の効果を最大限活用し、持続可能な水質改善を実現することが可能です。