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2025.02.28
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水処理フィルター入門ガイド・仕組みから種類まで徹底解説

水処理フィルター入門ガイド・仕組みから種類まで徹底解説

近年、水資源の重要性がますます高まる中、水処理プラントの役割は非常に重要です。水処理プラントでは、様々な種類のフィルターが使用され、原水に含まれる不純物や有害物質を取り除き、安全で清浄な水を供給する役割を担っています。

今回は、水処理フィルターとは何か、その仕組み、種類、選び方など水処理フィルターの基礎知識について、わかりやすく解説します。

水処理フィルターとは

水処理プラントにおける水処理フィルターとは、水をきれいにするために使われる「こし器」のようなものです。汚れや不純物を取り除き、安全で清潔な水を作る役割を持っています。

水には、砂や泥、小さなゴミ、バクテリア、化学物質などの汚れが含まれています。これらを取り除くために、水処理フィルターが使われます。フィルターを通すことで、飲料水や工業用水、下水処理などに適した水へと浄化されます。

水処理フィルターの種類

水処理フィルターには、様々な種類があり、処理対象となる物質や水の用途によって使い分けられます。

機械的フィルター

水の中のゴミや砂、微粒子をフィルターでこし取る方法です。

・砂濾過:砂の層を通して、大きな汚れや微粒子を除去する方法。比較的安価でシンプル
・紙状フィルター:紙製のフィルターエレメントを使用し、微細な粒子を除去する
・カートリッジフィルター:円筒状のフィルターで、さまざまな細かさのものがあり、工場や家庭用の浄水器に使われる
などの種類があります。

膜フィルター

非常に小さな穴の開いた膜を使い、細菌やウイルスなどの微細な物質を取り除くろ過方法です。

・精密ろ過膜(MF膜):大きめの細菌や微粒子を除去する

・限外ろ過膜(UF膜):MF膜よりもさらに細かい微生物やウイルスを除去できる

・逆浸透膜(RO膜):水分子しか通さないほど細かい膜で、塩分や化学物質、ウイルスなども除去などの種類があります。

化学的フィルター

化学的な作用を使い、水中の有害物質を取り除くフィルターです。

・活性炭フィルター:炭の微細な穴が、有効塩素や有機物、臭い匂いを発生する成分を吸着して除去する

・イオン交換樹脂:イオン交換反応を利用して、水中の特定のイオンを除去する
などの種類があります。

 生物学的フィルター

微生物の働きを利用し、有機物や汚れを分解するろ過方法です。

・バイオフィルター:フィルター内部に微生物を定着させ、アンモニアや有機物を分解する
・微生物の活用:バクテリアを培養し、汚れを分解する
などの種類があります。

特殊用途のフィルター

産業向けや特定の高度な処理に使われるフィルターです。

・高精度ろ過フィルター:微粒子まで除去
・産業用途に特化したフィルター
などの種類があります。

水処理フィルターが水をきれいにする仕組み

水処理フィルターが水をきれいにする仕組みについて、基本的な原理と構造に焦点を当て、わかりやすく解説します。

基本的な原理

水処理フィルターの基本的な原理は「ろ過」です。ろ過とは、水中に含まれる不純物を、フィルター材と呼ばれる多孔質の素材を通過させることで除去します。

フィルター材の微細な孔よりも大きな不純物は、物理的に通過できず、フィルター材の表面に不純物が吸着されます。

フィルターの構造

水処理フィルターは、大きく分けて以下の要素で構成されています。
・フィルターハウジング:フィルター材を収容する容器
・フィルター材:不純物を除去する素材です。砂、活性炭、膜など、様々な種類がある
・流入部:原水がフィルターに流入する部分
・流出部:ろ過された水がフィルターから流出する部分

このような仕組みを通して、不純物を除去しています。

水処理フィルターの選び方

水処理フィルターの選定は、プラントの安定稼働と水質管理において非常に重要です。用途や目的に応じて適切なフィルターを選ぶことで、効率よく水を浄化できます。

流量、ろ過精度、耐久性、コスト面の比較

フィルターを選ぶにはさまざまな点を比較しなくてはなりませんが、以下の点は特に重要です。

【流量】
フィルターが一定時間内に処理できる水の量(L/minやm³/h)のこと。使用する場所や目的に応じて適切な流量のフィルターを選ぶ必要があります。大規模な水処理には流量の大きなフィルターが必要ですが、逆に精密ろ過をする場合は、流量よりもろ過精度を重視します。

【ろ過精度】
フィルターが除去できる粒子の大きさ(μm=マイクロメートル)を表す指標。一般的に、数値が小さいほど高精度なろ過が可能です。ろ過精度が高いほど除去できる物質は増えますが、水の流量が低下するため、用途に応じたバランスが必要です。

【耐久性】
フィルターが長期間使用できるかどうかの指標。寿命はフィルターの種類や使用環境によって異なり、定期的な交換やメンテナンスが必要です。頻繁に交換が必要なフィルターはランニングコストがかかるため、使用環境に応じた耐久性を考慮します。

【コスト面】
初期投資だけでなく、フィルター交換やメンテナンスのコストも考慮することが重要です。たとえば活性炭フィルターは、初期費用は低いですが、交換頻度が高いため維持コストがかかります。イオン交換樹脂は、初期コストはややかかるものの、再生方式によってはランニングコストを抑えられます。

運用環境に合わせた最適な配置

水処理フィルターは、使用する環境や用途によって適切な組み合わせを選ぶ必要があります。

たとえば浄水場や下水処理場のように大量の水処理を行う場所では、まず砂ろ過で大きなゴミを除去し、UF膜でウイルスや細菌を取り除きます。それからバイオフィルターで有機物を分解するなど、いくつもの工程を経て水をきれいにしていきます。

プラントの規模や構造、水の流れなどを考慮し、最適な場所にフィルターを配置することが大切です。

水処理フィルターのメンテナンス

フィルターの性能を維持するためには適切なメンテナンスが不可欠です。適切なメンテナンスを行うことで、フィルターの寿命を延ばし、水の浄化性能を保つことができます。

日常点検と定期点検

日常点検は、フィルターの異常を早期に発見し、重大なトラブルを未然に防ぐために重要です。以下の項目を定期的に確認しましょう。

・水流の確認:水が正常に流れているか、流れが遅くなっていないか確認する。流れが遅い場合、フィルターが詰まっている可能性がある
・異臭の確認:水に異臭がないか確認する。臭いがする場合、フィルターが効果的に汚れを除去できていない可能性がある
・圧力のチェック:特に膜フィルターの場合、フィルターにかかる圧力が正常かを確認する。圧力が高すぎる場合、フィルターが詰まっている可能性がある
・目視点検:フィルター周辺に漏れや破損がないか目視で確認する
・水質の確認:処理水の濁度、色度、臭気などをチェックし、異常がないか確認する

定期点検は、日常点検では発見できない潜在的な問題を早期に発見し、適切な対策を講じるために行います。定期点検の頻度は、フィルターの種類や使用状況によって異なりますが、一般的には月に1回以上行います。

・フィルターの汚れ具合の確認:目詰まりや汚れの蓄積を確認し、必要に応じて洗浄や交換を検討する
・圧力測定:フィルターの入口と出口の圧力を測定し、差が大きすぎる場合はフィルターが詰まっている可能性がある
・パーツの劣化チェック:パッキンや接続部に亀裂や劣化がないか確認する
・フィルター膜の状態確認(RO膜など):膜に目に見えない穴が開いていないか、または劣化していないかをチェックする

フィルターの洗浄方法

フィルターは定期的に洗浄を行うことで、汚れが詰まるのを防ぎ、長持ちさせることができます。フィルターの種類によって洗浄方法が異なるため、各フィルターに適した方法で洗浄します。

フィルターの交換時期

フィルターは長期間使用していると効果が薄れ、交換が必要になります。交換時期は、フィルターの種類や使用環境、使用頻度に依存します。

一般的には、以下の基準を目安に交換時期を判断します。
・圧力上昇:フィルターの差圧が一定値を超えた場合
・流量低下:処理水量が著しく低下した場合
・水質悪化:処理水の水質が基準値を満たさなくなった場合
・フィルターエレメントの寿命:メーカーが推奨する交換時期

たとえば砂ろ過フィルターは、砂自体が詰まることは少ないため定期的な逆洗で洗浄しますが、約5~10年で砂を交換する必要があります。

イオン交換樹脂は交換が必要な場合と、再生して繰り返し使用できる場合があります。再生可能な樹脂は、通常2~5年に1回の交換です。

まとめ

水処理フィルターは、水の浄化において重要な役割を果たします。フィルターの種類には、機械的、膜、化学的、生物学的なものがあり、それぞれの特性に応じて使用されます。フィルターを選ぶ際は、流量、ろ過精度などを総合的に考慮することが重要です。

また、フィルターの効果を維持するためには、日常的な点検や定期的な洗浄・交換が必要です。適切なメンテナンスとフィルター選びを行うことで、水処理の効率を最大限に引き出し、安全で清潔な水を提供することができます。