水処理設計の基礎知識・プロセスとポイントを徹底解説

水処理設計は、私たちの生活や環境を守るために欠かせない技術です。たとえば、身近な食品加工工場では、有機物を多く含む排水が発生しますから、海や川に流す前に適切な処理が必要です。
また、金属表面処理関連工場では、金属を含んだ排水の処理が重要となります。これらの排水を適切に処理するためには、各業界の特性に合わせた水処理設計が必要です。
そこで今回は、水処理設計の基本的な考え方やプロセスなどをわかりやすく解説します。
水処理設計とは
水処理設計とは、「汚れた水をきれいにするための仕組みを作ること」です。私たちが使った水や工場から出る汚水は、もしそのまま自然に流してしまうと、環境を汚したり、人体に害を及ぼしたりします。
ですので、汚れた水をきれいにしてから川や海に戻す必要があります。
水をきれいにするための計画
水処理設計とは、水をきれいにするための計画を立てることです。
たとえば
・どんな方法で水をきれいにするか
・どんな設備を使うか
・どれくらいの時間やコストがかかるか
などを決めます。
簡単にいうと、水処理設計は「汚れた水を安全にきれいにするために、どんな手順で、どんな設備を使うかを考える仕事」だといえます。
身近な例でいうと、家庭用浄水器を選ぶのも、ある意味「水処理設計」のひとつです。
水処理設計の重要性
飲み水やお風呂、トイレなど日常的に使っている水や工場で発生する汚水がきれいでなければ、健康や自然に悪影響を与えることになります。
健康を守るため
汚れた水には細菌やウイルス、化学物質が含まれていることがあります。これらが私たちの体に入ると、病気や感染症を引き起こす可能性があります。
飲み水が汚れていた場合、それを飲んだ人々が食中毒になったり、感染症にかかったりするリスクが高くなります。
環境を守るため
汚れた水をそのまま川や海に流すと、水質が悪化し、魚や植物が生きられなくなります。
工場から出る排水が処理されずにそのまま川に流されると、川の中の酸素が減り、魚が住めなくなり、他の生物にも影響が出ます。水処理設計は、このような環境への影響を最小限に抑えるために重要です。
法規制を守るため
政府や自治体は、水質の基準を定めています。たとえば、工場などで排水を流す場合、決められた基準を超える汚れた水を流してしまうと、罰金や営業停止などの罰則を受けることがあります。
水処理設計は、これらの法的な基準を守るために必要です。
水処理設計の基本プロセス
水処理設計の基本プロセスは、汚れた水をきれいにするために必要な計画から施工まで、いくつかの重要なステップを踏んでいきます。
基本計画
まず、どんな水処理施設を作るのか、大まかな計画を立てます。これは、家を建てる時の間取り図のようなものです。
たとえば、家庭から出る水と工場から出る水では、含まれている汚れが違います。水の種類を理解したうえで、どれくらいの量を処理しなければならないのか、どんな汚れが含まれているのかを決めます。
1.水質分析
まず、水の汚れ具合を分析し、化学物質や微生物など汚れた水がどんな物質を含んでいるのかを詳しく調べます。
2.目標設定
どれくらいきれいにする必要があるのか、目標値を決めます。
処理方法の選定
次に、どんな方法を使って水をきれいにするかを考えます。水の汚れ具合に応じて、最適な方法を選ぶのです。
代表的な方法としては、物理的に汚れを取り除く「ろ過」、化学的に反応させる「化学処理」、微生物を使って汚れを分解する「生物処理」などがあります。
設備の設計
選んだ処理方法を実際に行うための設備を設計します。たとえば、ろ過装置や化学反応を行うための反応槽などを設計します。
・必要な設備のサイズを計算する
・使用する機械や材料を選ぶ
・どのように設置するかを計画する
目標値を達成するために、どの浄化方法(ろ過、薬品処理、微生物処理など)を組み合わせるか、機械や設備の配置はどうするかなどを細かく設計します。
施工
設計が決まったら、実際に設備を作ります。工場や現場で、設計図を元に設備を組み立てていきます。たとえば、ろ過装置や反応槽を設置し、配管を繋げて、水がうまく流れるように整備します。
・設備を組み立てる
・配管や機械を設置する
・設置が正しいかチェックする
運用開始から維持管理
すべてが順調に進んだら、実際に水処理を始めます。これではじめて、汚れた水がきれいに処理されるようになります。その後は、定期的なメンテナンスや点検を行い、設備が長く正常に動き続けるようにします。
水処理施設が完成した後も、安全かつ効率的に運転するために、定期的な維持管理が必要です。
水処理設計のポイント
水処理設計において特に重要な3つのポイントについて、わかりやすく解説します。
処理目標の設定
水処理を行う目的をはっきりさせることは、非常に重要です。なぜなら、目標が明確でないと、どのように水をきれいにするか、どの程度きれいにするかが分からなくなってしまうからです。
たとえば、工場から出る水が油分や化学物質を多く含んでいる場合、それに合わせた処理方法が必要です。「どんな汚れをどれだけ取り除くのか」を決めないと、適切な処理ができません。
飲み水として使えるレベルまできれいにする必要があるのか、それとも環境に流すだけでいいのか、その基準をしっかり定めることが、後の設計や処理方法選びに大きく影響します。
最適な処理方式の選定
水の汚れ具合に応じて、最適な処理方法を選ぶことも大事です。汚れの種類や量が違えば、それに合った処理方法を選ばなければ効率が悪くなり、時間やお金が無駄になってしまうからです。
たとえば、油分が多い水には油を分離するフィルターを使う方法が適していますし、微生物が多い場合はバイオ処理が効果的です。もし違う方法を選んでしまうと、きれいにならないばかりか、逆に水を汚す原因になることもあり、必要以上に高いコストがかかることもあります。
費用に影響を与える要因とコスト削減のポイント
水処理にはコストがかかります。処理方法や設備、運営費用などが関わってきますが、これらのコストを抑えることは、水処理設計では非常に重要です。無駄に高い設備や方法を選んでしまうと、最終的に負担が大きくなってしまいます。
たとえば、ある処理方法では設備の初期費用が高いけれど、ランニングコストが安い場合もあります。一方、設備の初期費用は安いけれど、定期的にメンテナンスが必要で、長期的に見ると高くつくこともあります。
これらをしっかり考慮して、コストパフォーマンスを重視した設計をすることで、無駄な支出を抑えることができます。
スイレイの水処理設計
スイレイは、水処理プラントのエンジニアリング企業として、「選定技術」を最大の強みとしています。この技術は、自社の特許と長年培った技術を各メーカーの機器を最適に組み合わせることで、お客様に最も適した水処理設備を実現するものです。
この技術を活かし、安全性を確保しながら、初期費用と運用コストのバランスにも配慮。さらに、各機器が仕様以上の処理能力を発揮できるよう設計し、お客様の目的を効率的に達成する水処理システムを構築しています。
水処理システムに関してお悩みの方は、ぜひ私たちスイレイにご相談ください。
まとめ
水処理設計は、汚れた水を適切に処理し、人々の健康や環境を守るために欠かせないプロセスです。設計を行う際には、まず「どの程度まで水をきれいにするのか」という処理目標の設定が重要です。その基準が決まることで、最適な処理方法を選ぶことができます。
また、水の汚れの種類に合わせた最適な処理方式の選定を行わなければ、処理の効率が悪くなり、無駄なコストが発生してしまいます。さらに、費用に影響を与える要因を理解し、コスト削減のポイントを押さえることで、長期的に安定した水処理を行うことができます。
適切な水処理設計を行うことで、安全で持続可能な水環境を維持することができるのです。