2024.11.25
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排水処理の基本を知ろう!排水処理方法の種類を解説

排水処理の基本を知ろう!排水処理方法の種類を解説

排水処理は、生活排水や産業排水などに含まれる汚染物質を取り除き、安全な状態にするための重要なプロセスです。排水処理には、排水の種類や含まれる汚染物質に応じたさまざまな方法と設備が用いられますが、基本的には「物理的処理」「化学的処理」「生物学的処理」の3つの方法に分かれます。

それぞれの方法には、さらに多様な技術や工程が存在し、これらを適切に組み合わせることで、効率的な水質浄化を実現します。

この記事では、排水処理の基本的な考え方から、物理的処理、化学的処理、生物学的処理といった主要な処理方法、有害物質の除去方法まで、実務に役立つ知識をわかりやすく解説します。

排水処理とは?

排水処理は、工場や事業場から排出される産業排水、および一般家庭からの生活排水に含まれる汚染物質を、物理的、化学的、生物学的な方法を用いて浄化し、環境への影響を最小限に抑えるための一連のプロセスのことです。

私たちの生活や産業活動は、どうしても水を汚染してしまうため、排水処理は環境を守るために欠かせない技術です。適切な排水処理は、水環境の保全、公衆衛生の維持、そして持続可能な産業活動の実現に不可欠です。

排水処理の目的

排水処理の主な目的は以下の4点です。

1.水質の改善:排水中の汚染物質を除去し、河川や湖沼などの水質悪化を防ぐ
2.環境と生態系保護:土壌や地下水への汚染物質の拡散を防いで生態系を保護する
3.資源保護:排水中の有用な物質を回収し再利用するとともに水資源の有効利用を促進する
4.法令遵守:水質汚濁防止法などの環境関連法規制への対応

特に産業排水の処理においては、製造工程で使用される様々な化学物質や重金属類の除去が重要です。

水質汚濁防止法では、特定施設を設置する工場や事業場からの排水について、COD、BOD、pH、SS、有害物質などの排水基準が定められています。

また、この法令の基準よりも都道府県がさらなる厳しい基準(上乗せ基準)を定めること認められていますから、地域によっては条例でさらに厳しい条件が設定されている場合もあります。

排水処理の分類

排水処理方法は、汚染物質の種類や濃度、処理の目的などによって様々です。大きく分けると、物理処理、化学処理、生物処理の3つに分類されます。

それぞれに異なる技術や設備が用いられ、処理の種類や排水の性質によって組み合わせて利用されることが一般的です。

【物理的処理】
主に沈殿やろ過など、重力や物理的な力を利用して汚濁物質を除去する方法です。

<例>
・スクリーニング:固形物の除去
・沈降分離:浮遊物質の重力沈降
・ろ過:微細な浮遊物質の除去
・浮上分離:油分などの除去

【化学的処理】
薬品を添加して化学反応を利用する処理方法で凝集沈殿や中和処理などが該当します。

<例>
・中和処理:pHの調整
・凝集沈殿:濁質の凝集除去
・酸化・還元:有害物質の分解
・吸着:有機物質などの除去

【生物的処理】

微生物の働きを利用し、有機物を分解する方法です。活性汚泥法などが広く利用されています。

<例>
・活性汚泥法:好気性微生物による有機物分解
・生物膜法:微生物膜による処理
・嫌気性処理:メタン発酵など

これらの処理方法は、排水の成分や処理の目的によって、組み合わせて使用されます。

排水処理方法の種類

排水処理の方法について、さらに細かい分類をしながら概要について説明していきます。

凝集沈殿

凝集沈殿法は、薬剤(凝集剤)を用いて水中の汚れをまとめて沈殿させ、 固液分離を行います。工業排水や家庭排水で広く使われる基本的な方法であり、排水中の浮遊物質や濁りを効率よく除去します。

水の中には、肉眼では見えない小さな汚れがたくさん含まれていますが、これらの汚れは、そのままではなかなか沈みません。そこで、凝集剤の添加によって水中の小さな汚れを引き寄せ、大きなフロック(塊)を作ります。重力によって、フロックが沈んでいきますので、これを除去すれば水がきれいになるという仕組みです。

スイレイでは、重金属の処理、主にめっき、表面処理工場からの排水を得意としております。

シアン処理

シアン処理は、工業排水に含まれるシアン化合物(青酸化合物)を分解する方法です。シアン化合物は、金属メッキや化学工業などで使用されることがありますが、猛毒です。 よく推理小説などに「青酸カリ」として出てきますが、ごく少量でも人体に非常に有害であるため、排水中に存在すると非常に危険です。

また、シアン化合物が環境中に排出されると、生態系に大きな影響を与えてしまいます。

そのため、排水する前に必ず水を無毒化することが必須です。 現在ノンシアン化が進み代替のめっき技術が出てきていますが、めっきの質が異なり未だに需要があるのが現状です。 処理の方法はアルカリ塩素法を用いています。苛性ソーダによりアルカリ域で、次亜塩素酸ソーダで酸化処理を行い、窒素ガスとして処理をします。2段階の反応でPHとORPを調整して行います。

ただし原水でも1段階目の反応でもPHが酸性側になると有毒ガスを発生するので、事故を想定して設計することが必要になります。

フェントン処理

フェントン処理は過酸化水素と鉄塩を使った化学処理法で、主に難分解性有機物の分解に用いられます。過酸化水素と鉄イオンの反応によって生成されるヒドロキシルラジカルという強力な酸化剤を用いて、難分解性の有機物を分解する処理です。

フェントン反応により強力な酸化剤が生成され、排水中の有害物質を分解します特に、工業排水の有機汚染物質除去に効果があります。

スイレイではSn・Znとの合金の排水などに用いることが多いです。ただ、フェントン反応はランニングコストがどうしても高くなってしまい、原水水質の変動に対しての調整が困難ということがあり、あまり提案する機会は少ないのが実情です。それでも、特定の排水に対してはものすごく効果を示すので、ご紹介させて頂きました。

フッ素、ホウ素の処理

フッ素およびホウ素は半導体やガラス産業の排水に含まれることが多い物質です。 フッ素は非金属、ホウ素は半金属で 、自然界に存在する元素ですが、過剰に摂取すると人体に悪影響を及ぼすことがあるため、放出前に除去する必要があります。

フッ素の処理に関しては中性凝集沈殿でフッ化カルシウム、フッ化アルミとして除去します。フッ素処理には特徴があり、Ca、Alで凝集した処理水をもう一度同じ処理をすると、フッ素濃度の平衡濃度の関係で処理精度が上がります。従って基本的に2段凝集沈殿処理で考えます。

ホウ素の処理に関しては、これといったものが無く、強いていえばマグネシウムを助剤として凝集沈殿処理を行うぐらいしか方法がないのが現状です。

リンの処理

リンは、 骨や歯の形成やエネルギー産生、植物の生育などに必要な物質ですが、河川や湖沼に流入すると富栄養化を引き起こし、藻類が過剰に繁殖する原因になります。これは、アオコや赤潮といった現象を引き起こし、水生生態系のバランスを乱し、悪臭や水質悪化につながります。特に、湖沼や湾内など水が停滞しやすい環境では、リンの影響が強く現れるため、適切なリン処理が不可欠です。

リンの除去は主に凝集沈殿法が用いられ、カルシウム塩やマグネシウム塩による化学的処理が一般的です。

また、生物学的リン除去法(嫌気-好気法)も効果的な処理方法として知られています。

よくある相談事は無電解めっきで用いられるリンがカルシウムやマグネシウムを添加していても処理が出来ないというお話です。カルシウムやマグネシウムと反応するのはリン酸の状態のリンで、めっき液で用いられている次亜リン酸の状態では処理できません。

次亜リン酸を酸化処理することによってリン酸に酸化してカルシウムとマグネシウムと反応させることが出来ます。この様に前処理が必要なことがあるので注意をして下さい。

窒素処理

窒素も富栄養化の原因物質であるため、そのまま放出してしまうと藻類が過剰に増殖する原因になります。

排水に含まれる窒素は有機体窒素、アンモニア性窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素の4形態に分けられ、それぞれ処理方法が異なりますが、微生物を利用した硝化・脱窒プロセスによって、窒素をガス化し、無害な状態にします

硝化菌や脱窒菌といった微生物を利用して、アンモニア態窒素を硝酸態窒素に変え、さらに窒素ガスに変化させて除去していきます。

スイレイで多く扱っているのは、亜鉛めっきの塩化アンモン浴の排水処理です。アンモニアを次亜塩素酸により窒素ガスへと分解をして処理を行います。以上の様にアンモニア性窒素に関しては化学的処理が可能ですが、有機体窒素、亜硝酸、硝酸態窒素に関しては微生物の力を使わないと処理が出来ないのが現状です。

CODとBOD

COD(化学的酸素要求量)とBOD(生物学的酸素要求量)は、水中の有機物濃度を測る指標です。これらは排水処理の効果を測定する基準として用いられます。

・COD:排水や河川水中に含まれる有機物を、化学薬品を使って酸化させた際に消費される酸素量を測定したもので、化学的に酸素を消費する物質がどれだけ含まれているかを示す指標である

・BOD:水中の有機物が微生物によって分解される際に消費される酸素量を示すもので、主に水中に存在する微生物が酸素を利用して有機物を分解する際に必要な酸素の量を測定したもの

これら二つの指標の処理には、方法として基本的には生物処理になりますが、物理化学的処理であれば、酸化分解処理、活性炭による吸着処理が挙げられます。

また、クロム還元処理に使われる重亜硫酸ソーダなどの還元剤はCODとして検出されてしまうので、適正な添加量でないとCODの基準値を守れないことがよくありますので注意する必要があります。

活性炭吸着処理

活性炭吸着処理は、微細な孔を持つ活性炭により有機物や悪臭成分を吸着し除去する方法です。特に、水に溶けにくい成分を効果的に取り除けるため、下水や産業排水の仕上げ処理に利用されます。

活性炭は、表面積が非常に大きい構造を持ち、微細な孔(ミクロポア、メソポア、マクロポア)により、さまざまな分子を吸着する能力があります。

活性炭吸着処理は以下のような用途で使用されます。

・有機物の除去:工場排水に含まれる化学物質や有機汚染物質を吸着し、BODやCODの低減を図る

・臭気や味の除去:不快な臭気成分や、飲料製造で問題になる異味成分を吸着する

・微量汚染物質の除去:医薬品、農薬、重金属などの微量な汚染物質を吸着し、水質基準に適合させる

・色素の除去:食品や染料工場の排水に含まれる色素を吸着し、排水の透明度を向上させる

スイレイが主に得意としているのは、めっき、表面処理の排水に含まれる有害物質の吸着です。

活性炭による吸着処理は凝集沈殿法に組み込みやすく、 大幅なコストを削減にもつながります。

脱水処理

脱水処理は、排水処理プロセスの最後に行われる重要な工程で、スラッジ(汚泥)中の水分を減らすための処理です。汚泥は、そのままでは大量の水分を含んでおり、後処理や運搬に大きなコストがかかるほか、悪臭や衛生上の問題も発生します。

そのため脱水処理を行い汚泥の体積を減らして廃棄コストを削減しするとともに、スラッジ(汚泥)を取り扱いやすくする必要があるのです。

スイレイでは主にめっき、表面処理の排水を取り扱うことが多く、汚泥の成分は金属水酸化物になりますので、基本的にフィルタープレスと呼ばれる脱水機を使用しています。

現在は乾燥機を付けて含水率を40%以下まで落としたり、排水を分水しスラッジを有価金属として再利用したりする方法もあります。

まとめ

排水処理の概要やその種類について解説しました。排水処理は環境保護の観点から非常に重要なプロセスです。

物理的、化学的、生物的処理を組み合わせ、さまざまな有害物質を除去して、自然環境への影響を抑える役割を担っています。実際の運用においては、排水の状態や規制基準に応じて、これらの処理方法を適切に組み合わせることが重要です。

また、省エネルギーや処理コストの最適化も考慮しながら、効率的な運転管理を行っていきましょう。

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